新しい秩序の時代〜注69

公開: 2019年8月5日

更新: 2019年8月xx日

69. オーエンの社会実験

産業革命期のイギリスの資本家、ロバート・オーエンは、イギリスでの紡績事業の成功の後、米国での新事業に着手したそうです。オーエンはその事業のために米国内に広大な土地を買い、工場を建設しただけでなく、工場で働く労働者とその家族が生活するための住宅なども建設したそうです。オーエンは、その後の企業がそうであるように、従業員に良い仕事と生活の環境を与えることが、事業の成功につながると言う信念を持っていたようです。また、オーエンは、事業で得た利益を、資本家と労働者に分配し、その残りを将来の事業拡大のための投資資金にまわしたそうです。それは、オーエンが、企業は資本家の個人的所有物と言う面だけでなく、そこで働く労働者のためのものであり、さらには地域社会のものでもあるとする、社会主義的な思想を持っていたからであると言われています。

産業革命期の資本家達は、工場や生産施設は、自分の所有物であり、労働者には給与を支払っていることから、企業は自分の所有物であると言う考え方が普通でした。そのため、工場や施設が古くなっても、使える間は使い続ける傾向があり、機械などは著しく老朽化する例がありました。さらに、労働者には長時間労働を強制する資本家が多かったとされています。オーエンは、そのような企業経営は、長期的には失敗すると考えたようです。長期的な成功のためには、資本家の利益だけでなく、労働者にも利益を分配することが重要だと考えたようです。これは、20世紀の後半になって、多くの経営者が考えるようになった考えと似ています。つまり、オーエンは、次の時代の経営者に大きな影響を与えたと言えます。

参考になる読み物

リチャード・ドンキン(Richard Donkin)、「仕事の歴史(The History of Work)」(2001年)、パルグレーブ(palgrave)